やよいブログ

小泉やよい ● Vocal & Guitar / Songwriter / ボサノヴァ弾き語り

ボサノヴァ弾き語りアルバム、制作までの経緯とレコーディングの思い出

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現在、ボサノヴァ弾き語りのアルバム (CD) を制作しています。

いつもの演奏をそのまま録音したような作品です。

この3年間、ボサノヴァ弾き語りに集中して取り組んできて、自分なりの弾き語りの形がなんとなく見えてきたような感覚がありまして、それをそのまま自然な形で記録しました。

アルバムの詳細 (タイトル、曲目、価格、販売時期、販売方法など) については 、11月末頃にまとめてお知らせしたいと思っています。もう少々お待ちくださいm(_ _)m

 

今回は、アルバム制作に至る経緯やレコーディングの思い出について書いておこうと思います。(長くなります☕)

 

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これまでに私はアルバムを3枚作っています。

どれもオリジナル曲を中心に収録していて、各作品それぞれ特徴のある方法で制作しました。

 

●2006年『SOLA (そら)』: 12ch マルチトラックレコーダー KORG D1200 mkll を使って、身近にある楽器の音を少しずつ重ねて作った作品。

●2008年『Aquatron (アクアトロン)』: パソコン上で録音・編集するDTMのシステムを揃えて、水の音とか、扉の音とか、自分が気に入ったサウンドをいろいろな形に加工しながら音楽を組み立てた作品。

●2014年『reflection (リフレクション)』: 中村真さんのプロデュースのもとで一発録りした作品。立派なスタジオ&ハイクオリティな機材で録音していただいた。

 

2006年に最初のアルバムを作った頃から、周囲からは「ボサノヴァ弾き語りのアルバムを聴きたい」というご意見をちらほらといただいていたのですが、オリジナル曲はその他のスタンダードな曲と違って、自分が音源を作らなければ何も残らず存在しなくなってしまう、そういう思いがありました。

そして、これら3枚のアルバムを作り終えて、自分がオリジナル曲でやりたいことを形にできた、やり切った感じがして、2014年の『reflection』以降、新しいアルバムを作る意欲はありませんでした。

 

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2016年からボサノヴァ弾き語りに集中して取り組むようになり、録音の方は手持ちのレコーダーでサクッと録った弾き語りの音源をYoutubeに上げたりして気楽に楽しんでいたのですが、ライブを聴きにいらしてくださったお客様と会話する中で、「YoutubeよりもCDで聴きたい、ボサノヴァ弾き語りのアルバムを作ってほしい」という声を繰り返しいただいて、だんだんと気持ちが変わってきました。

ボサノヴァ弾き語りのアルバムを今作るということは、自分がこの3年間取り組んできたことを記録する良い機会です。2006年と比べたら、少しは音楽性も深まっているはず。

こんなふうに、ライブで出会った皆さんからの声をきっかけにして、アルバム制作を思い立ちました。

 

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具体的な計画を立てはじめたのは、2019年5月頃です。

今回のアルバムの大きなテーマは、「普段の演奏をそのまま録音したような作品にする」ということ。

そのためにまず最初に考えたのは、どこで、誰と、どんなふうに作るのか、ということでした。

あいにく、これまで使用していた私物の録音機材は故障して処分してしまっていたので、一人では作れません。

弾き語りはその時の自分がそのまま表れてしまう、どこにも逃げ隠れできない音楽です。

慣れない場所や人で余計な緊張をしてしまうことも避けたいと思っていました。

 

自然体で録音するために、自分にとって一番適している場所はどこか、あれこれ考えていた時に思い浮かんだのが、東塩釜にあるカフェ月とオリオン (以下「月オリ」) でした。

月オリさんではこれまでに3回ライブをさせていただいたことがあるのですが、その時に控室として使わせていただいた2階の和室が、自宅の練習室と音響や雰囲気が似ていて、そこにいるだけですごくリラックスできたことを思い出したのです。

早速オーナーのCさんにご相談してみたところ、Cさんも興味を持ってくださって、ご協力いただけることになりました。

 

録音など音作りのエンジニアリングは、以前月オリでのライブでギターを弾いていただいた鈴木次郎さんにお願いしました。

次郎さんはギタリストであると同時に、ご本人はあまり言いたがらないのですが、トラックメーカーとしてメジャー作品の制作にも参加されたりしていて、音作りにとても詳しい方です。

長い付き合いで、お互いの音楽の好みも、どんな人間かもなんとなく理解しているような仲ですし (謎は多いですけど)、次郎さんにならリラックスしてお任せできそうと思って相談してみたところ、ご協力いただけることになりました。

 

アルバム全体としては、ライブのお土産に気軽に買えるような飾らない作品にしたかったので、パッケージなどはできるだけ簡素な作りにして、デザインも自分で行うことにしました。

 

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私が千葉に住んでいるため、宮城に住んでいる次郎さんや月オリさんとはそう何度もお会いすることができません。

そんな中でもスムーズに確実に進めるために、打ち合わせと機材セッティングのテストをかねた仮録音を2019年6月13日に、本番のレコーディングを2019年10月13日~14日に行う計画を立てました。

 

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2019年6月13日(木)。日帰りで月オリへ。

梅雨時でしたがよいお天気に恵まれて、すぐに帰らなければならないのがちょっともったいないくらいでした。

月オリは仲卸市場に向かう道沿いにあり、目の前の道路はトラックも多く通ります。もちろん防音設備はありませんので、この日は車の通行音をチェックしたり、機材の位置関係を調節したり、部屋の音響を確認したりと、本番のレコーディングに向けて具体的な準備を進めることができました。

仮録音の音もまずまずの出来。ホテルや新幹線を予約して、あとは10月が来るのを待つばかり、となりました。

 

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「10月になれば暑くもなく寒くもなくお天気も安定するだろう」というのが、今回のレコーディングを10月に設定した理由でした。

その予想が全くはずれてしまいました。10/12~10/13にかけて東日本を襲った台風19号

レコーディングの予定は13日と14日だけれど、私は宮城に行けるのか?レコーディングできるのか??

台風がくる前の段階で発表された鉄道の計画運休の情報を見て、とりあえず13日はレコーディングをやめて移動に専念することにしました。

 

そして、10月13日(日)。

東日本の各地に、ひどい被害が...。

宮城県内、塩釜でもあちこちで冠水・浸水していることが分かりました。

月オリは海の目の前にあります。。これは無理かもしれない...と正直思ったのですが、オーナーCさんが朝になってお店を確認したところ、、、被害なし。  え、マジで。。

「これなら14日にレコーディングできるよー」とご連絡をいただいた時は、信じられないような気持ちでした。

 

自宅の最寄りの路線は昼頃に動き出しました。あとは東北新幹線が動いてくれれば...。

でも、その肝心の東北新幹線が、なかなか運転再開の見通しが立たない。新白河~郡山の間の上り線に土砂が流入し撤去に時間がかかっているとのこと。(その後のニュースで、土砂は岩だったということが分かりました。ちょっと絶望。。)

家で待っていても仕方がないので、とにかくダメもとで、東京駅まで行ってみることにしました。

東京駅の構内に流れるアナウンスでは旅行の取り止めを促していて心が揺れましたが、Twitterで検索してみると夕方頃に運転再開の見込みとの情報が!

わずかな希望を胸に、東北新幹線の改札口で待つこと2時間。

同じように長期戦を覚悟で待っている人達の様子がザワザワしてきたので、近づいてみると夕方4時に運転再開することが判明。

半分諦めていたけど、13日のうちに宮城に行けるなんて、本当に嬉しくて、新幹線が動き出した時にはちょっと泣きそうになりました。

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これがその時に乗車した新幹線です。復旧作業にあたられた職員の皆さま、本当にありがとうございます。

 

ホテルは本塩釜に取っていましたが、仙石線が一日運休していたので、仙台から本塩釜までCさんに車で送っていただきました。

仙台駅でCさんと合流できた時は、無事に会えたことが信じられなくて、思わず興奮状態でキャッキャしてしまいました(^-^;

Cさんにはこの旅を通してお世話になりっぱなしでした。本当にありがとうございましたm(_ _)m

 

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2019年10月14日(月・祝) いよいよレコーディングです。

トラックの通行が少なくなるのを待って、録音をはじめました。

セッティングをしている時はまだ交通量が多かったのですが、集中して録音をはじめた頃から車の音が静かになり、計画通り、リラックスして演奏することができました(*^-^*)

録音を終えた頃に雨が降りはじめて雨粒の音がするようになったので、静かなタイミングにちょうどよく作業することができて、時の運にも助けられました。

 

レコーディング終了後、軽く打ち上げをかねて、Cさんのお料理でお食事会。

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きりたんぽ、美味しかったです!

 

 

レコーディングの思い出は以上になります。

いろいろと大変な中でも首の皮一枚でつながったような、ギリギリのところで運があったような、経験しようと思ってもなかなか経験できない大冒険だったので、、記録しておくことにしました。

物作りの背景には、それぞれの物語があります。面白いものですね。