やよいブログ

小泉やよい ● Vocal & Guitar / Songwriter / ボサノヴァ弾き語り

『cure』曲解説

私の音楽を好んで聴いてくださっている皆さんへ。

『cure』に収録した曲について、曲を作った時の思い出などエピソードをまとめました。

よかったらご覧ください。

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音楽は聴き手の皆さんのそれぞれの感性で自由に聴いてもらえたらいいと思っているので、解説めいたことはあまりやらないできたのですが、最近曲について質問を受ける機会がありまして、もしかしたら興味をお持ちの方もいらっしゃるかもしれないと思いまして、書いてみることにしました。

ずいぶん昔に作った曲だから、忘れてしまっていることも多いですし、いつの間にか記憶が変形してしまっている部分もあるかもしれません💦

今現在パッと思い出せる範囲で、記録しておきたいと思います。

 

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〔Clock〕未発表曲
2010年頃に作った曲です。
ライブではほとんど演奏したことがなくてずっと眠らせていたけれど、実はお気に入りの曲で、ちゃんと録音しておきたいとずっと思っていたので、今回録音できてとても満足しています。
若い頃、部屋でボーッとしていると、時計の秒針のカチカチという音が妙に大きく聞こえてきて、だんだん部屋に積み重なって自分が支配されていくような感じがして、時間というものが何だか分からなくなるようなことがありました。その不安定な感覚を土台にして、分かり合えない孤独感を織り込んで、曲として昇華させることができたかなと思います。

 


〔みずいろ〕リクエスト曲:収録アルバム『SOLA』(2006年) 
幼い頃のことを思い出すと浮かんでくる景色があります。どこかで見た大きなシュロの木とか、家の軒下にあったアリの巣とか。そういった記憶の中にある遠い景色からイメージをふくらませて作った曲です。

 


〔Key of Life〕未発表曲
2009年頃に作った曲。初めて病気の治療のために手術をした時、体力・気力ともにガタ落ちしてしまって、退院後もなんだかずっとぐったりしていたのですが、療養中になんとなくギターを触っているうちに詞と曲が一緒に浮かんできました。(ちなみに「こぼれおちるもの」もその頃同じようにして作った曲です。)
苦しい中でも、わずかな希望を感じたい。自分の中に隠れていた思いに、曲を作ったことで気付かされました。

 


MetasequoiaCD限定 リクエスト曲:収録アルバム『Aquatron』(2008年), 『reflection』(2014年)
仙台に住んでいた頃、青葉山にある東北大学生命科学研究科のキャンパスに通っていたので、森の中を歩くことが日常になっていました。
メタセコイアは「生きている化石」と呼ばれたり、広瀬川の霊屋下辺りにはセコイア類の化石があったりして、なんだかこの植物は化石づいてますよね。

樹木に囲まれている感覚と、化石→眠ることについて、イメージして作った曲です。
『Aquatron』の歌詞カードにはメタセコイアの実の写真を載せています。被写体になったこの実は、「メタセコイア」という曲を作ったことを知った大学の先生が、何気なく私に下さったものです。今も手元に取ってあるはず......と思って探してみたのですが見つからない。。行方不明になってしまいました(T_T)   ちなみにこの写真は仙台カフェ モンサンルーのマスター大内仁詩さんに撮影していただきました。
私の作品の中では一番人気かもしれません。個人的には『Aquatron』に収録したバージョンのコーラスワークがお気に入りです。

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photo: Hitoshi Ouchi (cafe mon st. lou)

 


〔Blue Moon〕未発表曲
2010年頃に作った曲。
Shruti Boxというインドの楽器を手に入れて、その音の響きから、メロディーのインスピレーションを得ました。
一ヶ月のうちに二度満月があることを「ブルームーン」と呼ぶそうです。そんなブルームーンの夜に、部屋の灯りを消して、月あかりを眺めながらこの曲を作りました。その日の満月は、シルバーの、凛とした、でもどこか優しい光だったのを覚えています。
ライブではShruti Boxを奏でながら演奏していましたが、今回はアカペラで歌っています。

 


〔Light〕未発表曲
2006年頃に作った曲です。当時、弾き語りライブでよく歌っていました。
本当は『Aquatron』に収録したかったんですが、うまくトラックがまとまらなくて断念。その後放置していました。
今回あらためて歌ってみて、この曲のタフさに見合う力量が今になってやっと身についたのかなと思いました。曲に自分が追い付いた!

 


〔Dancing with Devils〕CD限定 デモ音源バージョンで録音:収録アルバム『Aquatron』(2008年)
2006年に仙台リブリッジ エディットで開催された 画家 麻生日出貴さん個展『DANCE WITH DEVILS』展。その会場で行ったライブイベントに合わせて作った曲です。
この曲を作った際に、弾き語りでサッとMP3レコーダーで録音したデモ音源を「こんなの作りましたよ~」という感じで麻生さんにお渡ししていました。緊急事態宣言が発令された2020年の春、昔の音源を聴きなおしていたのですが、この曲のデモ音源が見つからなくて残念に思っていたところ、麻生さんがまだ保存していてくださっていると聞き、送っていただきました。その音源が (自分で言うのもなんですが) なんだかすごくカッコ良かった!シンプルだけど本質を捉えていたんですよね。
デモ音源バージョンは『Aquatron』(2008年)に収録したバージョンとは構成が違っているのですが、こちらもちゃんと録音しておきたくて、今回はデモ音源バージョンの構成で歌いました。

 


〔風車〕リクエスト曲:収録アルバム『SOLA』(2006年)
2005年頃に作った曲です。
誰にでも一度くらいは、精神的に参ってしまって布団にくるまって過ごすような時期があると思うんですけど (私は20代前半がそういう時期でした)、そういう時に感じた閉塞感みたいなものと、世の中がだんだんきな臭くなっていく戸惑いを混ぜ合わせて、歌にしました。

 


〔Vostok〕CD限定 リクエスト曲:収録アルバム『reflection』(2014年)
2013年、南極の氷底湖Vostok湖で新種のバクテリアのDNAが見つかったというニュースを読んで、なんだか無性に感性を刺激されまして、そこからイメージして作った曲です。

私はギターを触りながら曲を作ることが多いのですが、この曲の場合は少し違って、こういうメロディーラインを歌いたい!という歌い手としての欲求のままに、メロディーで線を描くようにして作りました。

 

 

〔Library〕CD限定 リクエスト曲:収録アルバム『Aquatron』(2008年), 『reflection』(2014年)
2006年、仙台市宮城野図書館で『夜の図書館で遊ぼ!~あなたとふしぎなとしょかんで・・・~』というイベントにシークレットゲストとして参加させていただく機会がありまして、そのイベントに合わせて、夜の図書館をイメージして作りました。

この曲はミュージシャンから評価をいただくことが多いです。「どうやったらこんな曲を作れるの?」と言われたりして。。私もよく分からないのですが。。。
もしかしたら、この曲を作った日に宮城県美術館吉原治良展を見たこと、彼の最晩年の作品、大きな〇の絵に感銘を受けて「これは何なんだろう...」と思いながらしばらく眺めていた、そういう経験が影響しているのかも?この日は特別に感性が刺激されていたのかもしれません。

 


〔なつのよる〕リクエスト曲:収録アルバム『SOLA』(2006年)
初めて作った曲です。
実家の居間でひとりで過ごしていた午後の時間を思い出しながら作りました。夏なのに「こたつ」?と言われることがあるのですが、ご指摘ごもっともです。文学の言葉としては間違ってますよね。ただ、実家の居間は掘りごたつになってまして、テーブルとか椅子っていう感じじゃなくて...。季節に合わないんですが、自分の中にある現実に沿った言葉を優先して「こたつ」にしちゃいました。(「ソファ」とか、そういう言葉で濁してしまってもよかったのかもしれない、と今書きながら思いました(笑))

 


〔カーテン〕リクエスト曲:収録アルバム『SOLA』(2006年)
一人暮らしをしていた頃、部屋に薄緑色のカーテンをかけていました。
カーテンを開けて外に出ていく時の希望とか、生きているうちにいつの間にか背負ってしまう重荷とか、そういうものを動的に練り込んで作った曲です。
一聴してピンとくる方もいらっしゃるかと思いますが、ジョイスみたいなグルーヴィーな弾き語りをしたい!という気持ちもこもってます。

 


〔メロディ〕未発表曲
元々は、2009年頃に、知人が病気で辛い思いをしているという報せを受け、居ても立っても居られなくなって作った曲なのですが、後日落ち着いて見返してみると、全体として暗いイメージにまとまっていたので、2012年頃にあらためて再構成して作りなおしました。最初にこの曲を作った頃、ジルベルト・ジルの「Se Eu Quiser Falar Com Deus」をよく聴いていたので、その影響が曲の中に少しだけ残っているかもしれません。
♪あなたに あげたい このメロディ~♪このフレーズが爽やかに響いていればいいなと思います。

 


〔たそがれ〕リクエスト曲:収録アルバム『reflection』(2014年)
仙台では、広瀬川のほとりにあるアパートに住んでいました。川辺で水の流れや夕暮れを見ながらぼんやり過ごすことが多く、ある日ふと ♪明日を見ている~♪ というフレーズが思い浮かんで、そこから作った曲です。
セルジュ・ゲンズブールの「ジャヴァネーズ」みたいに、1コーラスは短いけれど、繰り返していくことで全体として深みが出て、まるで永遠に続いていくような……そんな構成を目指しました。

 


〔ふたつの空〕CD限定 リクエスト曲:収録アルバム『Aquatron』(2008年)
なんとなくジョアン・ドナートの音楽を想いながら作った曲です。
遠い場所にいる二人、ささやかな何かをおみやげに持って帰る、というような歌詞の世界観は、カエターノ・ヴェローゾの「野生の花 (Flor do Cerrado)」から着想を得ました。
デュエット曲として作ったんですが、そういえばまだ誰ともデュエットしたことがありませんね。